チャリ旅日記

旅のことや日常のことを気ままに綴るよ

鉄砲がかっちょいいと思う心

 

◯刀や鉄砲にゾクゾクするのはそれが人殺しの道具だからではなく、そのフォルムや存在に惹かれるからである。それは殺人の道具としての本来の役割をリアルに捉えられない我々だからこそ、その要素をひとまず脇に置いて、歴史的な遺産かつ漫画やゲームに登場するエンタメ的要素の方がしっくりとくるからだろう。これがもし現在でも戦争の絶えない時代だったなら、目の前にあるこれらの武器は、そのまま本来の役割から外れた捉え方などできなかったはずである。

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ーー国友に来ている。

◯国友は、種子島に漂着した外国船から買い取った二挺の拳銃をもとに、日本で初めて鉄砲製作が開始された地域の一つとされている。現在では単なる田舎の小さな住宅地だが、当時は街のほとんどの家で鉄砲が作られていたのだそうだ。

◯そんな歴史的偉大な街に車で二十分ほどの地域に住んでいながら、初めて訪れた私は資料館に展示された数々の鉄砲に興味津々だった。鉄砲の歴史からその製作工程や実物の展示などに夢中で見学する。

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◯三工程に分かれてそれぞれの職人たちによって一挺の鉄砲が作られたとされており、銃口に籠められたのは、弾と職人たちによる汗と涙の結晶である。

◯職人たちの技術力により模倣された鉄砲は、その後さらに改良を重ねられ、日本独自の鉄砲へと進化していった。織田信長がこれを戦で活用したことで歴史を大きく変えたのは有名な話。厨二心をくすぐられるような装飾の施された鉄砲なども展示されてあって、眺めているだけで、ちゅんごくたのちい。

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◯だがいっぽうで忘れちゃいけないことがある。この鉄砲が歴史を変えたその先には、多くの人間たちの凄惨な犠牲があるということ。

◯平和なうちはこれらの物は漫画やゲームに登場する創作物の一つにしか見えないが、戦争の絶えない地域では、今日も誰かが銃で命を奪われている。

◯鉄砲を眺めてかっこいいと思う心は平和な証である。だけど裏を返せば、それらは危機感の希薄さでもあるだろう。かの国で戦争報道が連日なされる中で、この感覚のままでいいのかと考えたくもなる。

◯国友はいまやただの田舎にある小さな街だ。石碑や資料館だけが往時の姿をかろうじて想起させるが、それ以外はどこにでもある小さな街である。

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◯明治になり鉄砲が必要ではなくなったことで鉄砲稼業もやがて廃業となったそうだが、需要がなくなればこうして消えてなくなるのが世の常である。戦いのない世界に人を殺す道具なんて必要がない。

◯世界のどこかでいまも着々と武器が製造されている。それらがやがて歴史の遺産としてすべて資料館に展示され、漫画やアニメの創作物としての役割にすべて置き換わったなら、それが本当の「平和」と呼ぶべき世界と言えるのかもしれない。

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