どうもリョウスケです
屋根から落ちて割れた瓦を土のう袋に詰めていく。たどり着いてすぐは肌寒さを感じた体は、いまや汗ばんで暑いくらいに火照っている。
庭には廃材となったタンスやソファーがこれでもかと大量に置かれたままになっていて、廃棄場に持っていくまでの順番をいまかいまかと待っているようだった。
どこの家の庭も似たようなものである。地震の影響で使えなくなった家具をとにかく外へと運び出しても、それらを廃棄場まで持っていくのは簡単ではない。
トラックの存在はもちろんのこと、トラックに積み込むための労力や、家と廃棄場を何度も往復するだけの時間。
廃棄場の場所は限られており一往復するだけで時間をかなり要する地域もある。そのうえ個人でやるにもかなり大変な作業も多く、だからこそ、ボランティアの力が必要不可欠だった。
土のう袋の容量は思ったよりも大きくて、つい調子に乗って袋いっぱいに詰め込むと、持ちきれないほど重たくなった。
重量と容量を考えながら袋に詰めて、それを力いっぱい持ち上げると廃材置き場へと運び続ける。
七人くらいボランティアがいるはずなのに、みんな作業に集中していて、現場は袋に瓦を詰める「ガシャン!」という甲高い音が響くだけ。
作業に集中しているとあらゆることが見えなくなった。
ふと気づくといつの間にか体中に泥や汚れがこべり付いている。それを払うと濡れてもいいようにと履いてきたモンベルのウエアに大きな引き裂かれたような傷があるのに気がついて。急速にモチベーションが急降下し、ショックで頭が真っ白になる。
どうやら瓦を持ち上げた時にできたらしい。
それでも弱音は吐けない。わたしの受けたショックなど、被災者が受けたショックに比べたら、比べることさえ失礼なほど些細なことだ。だから誰にも言わず、誰にも知られず、平気な顔で作業に戻る。
作業は三時間ほどで終わった。短いようでいて、体力を使う作業だけに思ったよりも疲労感がある。それでも作業が終わるとどこか晴れやかな気持ちになって、いい感じの疲労感と達成感が胸いっぱいに満たされていく。
明日もまた作業だ。このやり甲斐を次の作業の原動力にして、一日でも早い復興に役立てたい。
穴が空いたウエアのことなどもうどうでもよかった。どうでもよかったが、こいつを直す費用が頭をチラついたことは誰にも内緒である。
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