チャリ旅日記

旅のことや日常のことを気ままに綴るよ

「その日のまえに」

 


どうもリョウスケです

 

 

 

タイトル「その日のまえに

 


人はいつか死ぬーーー誰でも知っている事実だ。

その日に向かって生きていることも、

本当は理解している。

でも理解はしていても、

その事実を意識しているかと聞かれると、

私は頷くことができない。

 


人はいつか死ぬ。

だからってその「いつか」がいつなのかは

分からないし、考えたくもないし、

それ以上に

私の周囲にいる人物も、

そのいつかに向かって生きているという事実を

どこか蓋をして見ないようにしている。

でもどれだけ蓋をして必死で考えないようにしたって

その日は間違いなく自分の眼前に

ある時から徐々に、

あるいは唐突にやってくるのだ。

 


私たちはその日に向けて

常に考えておく必要があるだろうか。

それとも、

その日が来るまで蓋をして

見ないよう閉ざしておいてもいいのだろうか。

 

 

 

その日のまえに」は重松清の小説である。

連作短編集という位置付けで、

同じテーマで描かれた一話完結型の短編が複数収録されている。

 


この小説では家族や友人たちの身近な人間の死をテーマに描かれており、

「その日」ーーとはつまり「亡くなる日」のことを差し

その日に向かう当事者や、

その人の周囲の人物の物語が描かれている。

 


重松清の小説に触れたのは高校生のとき以来

十年ぶりぐらいだった。

読んで感嘆したのはその心理描写の秀逸さである。

リアリティーや繊細さが

文体から直接心に突き刺さってくるのだ。

 


だからこそ、

高校時代の私は彼の多くの作品に感銘を受け

どっぷりと埋没したものだが

だからこそ、

ある時から急にその繊細な心理描写に心が耐えられなくなり

十年ほど読むことを避けてきた。

 


その日のまえに」は名作だ。

少し躊躇しながらも友人に勧められて読んだことに

後悔はしていない。

 


ただやっぱり

先十年は読むのを控えようと思う。

彼の小説は私の心をズタズタに抉ってしまうのだ。

なぜなら、、、

 


人はいつか死ぬーーー。

 


化学が神の領域に到達し、

その事実をある日突然覆したりしない限り

それは事実だ。

 


私は自分がいつか死ぬのが怖い

でもそれ以上に身近な人間がいつか死ぬことの方が

ずっと恐ろしいと感じている。

 


できうることなら、

「その日」がくるまでその事実に蓋をして

見えないように隠してしまいたい。

いつか達観し、

受け入れられる「その日」までーーー。

 

 

 

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